小学校就学に向けて、学習の理解力や学ぶ内容に昔と比べると大きな変化があります。
特に文字学習については、図形模写の発達が遅れているのに対し、学校教育のペースが早まった(1年生は漢字50→80字)事も要因の一つではないかと感じています。
新版K式 という標準化時の調査(=発達の物差しを作る為の調査)では、1983年から2020年までの40年間で、
円模写→4.8ヶ月遅れ
正方形模写→10.7ヶ月遅れ
三角形模写→9.3ヶ月遅れ
菱形模写→9.3ヶ月遅れ
という状況です。幼児全体が、形を捉えたり、斜めの線を認知して書いたり、真似て書くことが大幅にゆっくりになりました。これでは文字も捉えにくいし覚えにくいでしょう。
加えて折紙(真似して折る)も遅れた項目であり、巧緻性の育ちもゆっくり、鉛筆の操作にも影響はあると考えられます。
反対に、色の認知など、進んでいる項目も半数程度あるので、子どもの能力自体が落ちているという訳ではないと思われます。ただ、遊びや社会の変化で、子どもの育ち方が変化しているのです。
昔遊びの衰退、スマホゲームの普及…この流れには逆らえませんし、学校教育は大きくは変わないでしょう。しかし、幼児期から、子どもの育ちに本当に必要な刺激を与えることは可能です。その中でも乳児期から感覚刺激をたくさん取り入れていただきたいです。感覚刺激は感覚欲求でもあり、大人がお腹すいたからご飯を食べる。眠いから寝ると同じ欲求です。人間にはは味覚、聴覚、触覚、視覚、嗅覚の五感があります。その他に二覚といって固有覚、前庭覚というものがあります。
前庭感覚とは耳の奥にある三半規管を通して、重力や体の傾き、スピード等を感じる感覚です。普段意識はしていませんが、私たちは常に重力に抗して姿勢を保持しています。また、目を閉じて片足立ちをすると姿勢を調整しようと身体が揺れているのを感じることが出来ます。これらは平衡を維持する働きがあるからです。また、前庭感覚は眼球を動かす筋肉と連動している為、私たちは音読や板書がスムーズに出来ます。(眼球運動) 人との距離感や方向感覚がわかるのも、前庭感覚のおかげです。
固有受容覚とは筋肉や関節を通して、体の動きや位置を感じる感覚です。力加減、動きのコントロールはとても大切な働きで、私たちが自然と物に合わせて触り方を変えたり、力を調節出来ているのはこの感覚のおかげです。また、お遊戯や体育の授業で真似がすぐに出来るのも固有受容覚、特に
ボディイメージの発達の働きのおかげです。固有受容覚が捉えにくいと、力加減が難しくトラブルになったり、身体の動
かし方がぎこちなくなったりして、日常生活での困り感につながることが多くなります。あまり知ら
れておらず、人にも伝わりにくい感覚ですが、日常生活で様々な行動をするのに必須となってきます。

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